地元の方にこそ見てほしい-市原湖畔美術館開館10周年記念展 『湖の秘密-川は湖になった』9月24日(日)まで開催中

南条嘉毅《38m-ネトの湖-》(2023)撮影:田村融市郎 提供:市原湖畔美術館

同市不入在住のカメラマン・加藤清市は、ダム湖に沈む村の日々をカメラに収め続けた。寄合で見せる村人たちの笑顔、移転のために墓を掘り起こす人々、住み慣れた家が取り壊される様子。人々の新しい生活への希望や先祖代々の土地を失う寂寥感を写し出した1500枚を超える写真の中から、33点が展示されている。『いちはらアート×ミックス2017』にも出展した南条嘉毅は、吹き抜けの展示室の地下を湖底に見立て、村人の暮らしがあった場所を音や照明などにより暗闇に浮かび上がらせる。作品の一部となった古民具は市原歴史博物館と地域の住民から、4トンの土砂は高滝ダム管理事務所の協力で運び込まれた。

加藤清市《水没した村の記憶》

 千葉県ゆかりの2人の彫刻家・尾崎悟と松隈健太朗は、初のコラボレーションで、養老川流域に育まれた大いなる自然とそこに息づく命を讃える空間を創出した。松隈は今年2月に逝去し、養蜂も手掛ける尾崎は作品の中で松隈へのメッセージをミツバチの言葉で記している。彫刻家の椋本真理子は、市原湖畔美術館の外観がコンクリートのダムと光る水面のように見えることから、ダムや花壇がモチーフの色鮮やかな作品を屋上に設置した。

尾崎 悟+松隈健太朗《懐かしい家 今もきっとあるところ》 2023年

 同展では美術館スタッフも、取材や写真撮影への同行、展示に使用する地域ゆかりの素材集めなどに奔走した。アーティストが描いた設計図の下に美術館と地域が協働して、地域の宝が詰まった宝箱を作り上げた。「子どもたちには、絵画だけでなく、写真・映像・彫刻などいろいろな表現方法を見てもらいたいと思います。アーティストのユニークな視線を通して、学校では習わない何かを感じとってもらえたら嬉しいです」と、戸谷さん。「本展は特に地元の方々にお越しいただきたいと思っています。見慣れた当り前の風景がアーティストの視点で見るとこんな景色に生まれ変わるんだと、驚きと発見の連続です」
子ども向けに『夏休み自由研究ルーム』を開設。会場マップの『湖の秘密スタンプラリー』では、美術館オリジナルポストカードをプレゼント。希望者全員に高滝ダムの『ダムカード』を配布している。詳しくは問合せを。

椋本真理子《water gate》2011年 撮影:田村融市郎 提供:市原湖畔美術館

市原湖畔美術館 ☎0436-98-1525
開館時間 平日10時~17時 土曜・祝前日9時半~19時 
日曜・祝日9時半~18時(最終入館は閉館30分前)
休館日 月曜・年末年始(月曜が祝日の場合は翌平日)
常設展 『深沢幸雄とメキシコ《衝撃の出会い編》』同時開催中
HPはこちらから https://lsm-ichihara.jp/

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